ASAメールvol.216 2023年9月16日 だれもがいつでも利用しやすい図書館プロジェクト
「共生社会の実現にむけた八王子のとりくみ」K・D
もし自分が認知症になったら…。そう考えると、怖くてしかたありませんでした。大切な人も思い出も自分が生きていることも忘れていくのではないか、という恐怖に襲われて認知症にはなりたくないと思っていました。しかし、その恐怖は間違った先入観からくるものだと知りました。今回の取材で、認知症と診断された当事者の方々とお話しすることが出来て、自分の考えがいかに知識不足だったかということを思い知らされました。認知症を持った方々の受け答えや笑顔を見ていると、認知症になっても幸せに暮らしていることを感じました。
今回、南大沢図書館で行なわれている企画展示を取材しました。「認知症に興味がない人にも興味をもってもらいたい」「認知症を正しく理解してもらいたい」「認知症があっても普通に暮らしたいということを皆に知ってほしい」という当事者の声から発案されたものです。南大沢図書館に訪問し、実際に関わった八王子市職員さん・認知症地域支援推進員さん・デイサービスDAYS BLG! さん、製薬会社の職員さんなどから貴重なお話を聞いてきました。それは、様々な役割を担う人々の共助によってつくられた知恵の産物でした。
南大沢図書館に認知症の方でも利用しやすい整備がなされたのは、BLGの利用者の方の「本を読みたい」という声から始まりました。その声をBLGの職員さんが受け取ったあと、八王子市高齢者あんしん相談センターの認知症地域支援推進員さんに繋げて、実現されたのです。当事者の声が実現されていく仕組みが八王子にあり、それがキチンと実証されていった例があることを今まで知らなかったので、もっともっとアンテナを張っていかなければと思いました。そしてまず「知ること」が、共生社会をつくるうえで重要だと学びました。
もし認知症になったら、という恐怖が完全になくなったとは言い切れません。認知症になれば、勤めている会社を退職せざるをえなくなったり、何かしらの制約を受けることは現代の日本では普通と言えます。だからこそ、障害は個人の要因から生まれるものではなく社会が作り出しているという社会福祉の考え方や、認知症の実態を肌で知っていくことが、だれもが生きやすい共生社会の実現のために大切なのだと思います。
今回の取材で様々な役割を担う方が、一緒になって誰もが生きやすい社会を実現しようとしている姿に、なんとなく将来に希望を持つことができました。そして私は学生として学びに徹し、共生社会の実現のために、理解の輪を広げられる人材へ成長してまいりたいと思いました。
「認知症になっても笑顔いっぱいで-認知症に対する深い理解とともに-」U・I
皆さん、こんにちは。学生ライター部のU・Iです。残暑が厳しいですが、お元気でしょうか。9月は世界アルツハイマー月間ということで八王子市でもいくつかの取り組みがされています。例えば南大沢の図書館では「認知症に対する正しい理解を深めてもらうこと」「認知症があっても普通に暮らしたいということを知ってほしい」という目的で展示が行われています。認知症の理解を深められる本とともに認知症になった方からの「認知症になっても終わりじゃない!」「認知症があってもできることからやればいい」と色紙に温かくも力強いメッセージが手書きで書かれています。今回、この展示に関わった「はちおうじDFC図書館部」のDAYS BLG!はちおうじ、八王子市高齢者福祉課の方、認知症地域推進員さんたちに取材をさせていただきました。
まず、DAYS BLG!はちおうじの認知症と診断されたメンバーさんとお話をさせてもらい、障がいを物ともせず、いきいきと楽しそうに活動している人たちであることを感じました。社会参加家有働を行っているDAYS BLG!の皆さんは新聞のポスティング、草刈り、駄菓子屋の経営、認知症の講演会や認知症がある人にとって暮らしやすい街作りなどを行っています。その中で認知症によって大好きだった図書館に通いづらくなってしまったメンバーのために、図書館のどのようなところが使いにくいのかを図書館部として調査し、図書館スタッフさんたちの協力を得て、少ない情報で本の場所を見つけやすくしたり、トイレの案内板を分かりやすくしたりするなど認知症であってもそうでなくても使いやすい図書館の形を作り出しています。また、今回の展示のように認知症に悩む方へのエール、そして周りの方への理解を深めることも大切な活動の一つです。お話を伺っているとき、冗談を言ったり、笑い合ったりする姿がとても印象的だったので、楽しく生きるコツは何ですか?と質問すると「とにかく外に出ること!」「認知症になってもなんとかなる。挑戦することが大事!」と力強く答えてくださいました。認知症という言葉が独り歩きして、マイナスなイメージを持たれがちですが、私が実際に出会った方は今を生きる笑顔の素敵な方たちでした。
また、暮らしを支えている推進員さんたちはただ自分たちで考えるだけでなく、認知症の方と話し、共に実行していくことで、皆が目の前の人を「一人の人間として」接していくことを当たり前の社会にしていきたいと話してくださいました。さらに、認知症の方と話すときに、こういうことを聞きたいんだと改めて周りが話したり、言い換えしたりすることが会話をスムーズに進ませる少しの工夫であることを感じました。小さな気遣いで、日常を取り戻すことが出来る人がいることをもっと多くの人に知ってほしいと思います。
世界アルツハイマー月間であるこの9月に認知症のことをよく知る機会にしてみませんか?認知症になっても「なんとかなる」の心構えや、誰かが認知症になってしまったときにこうしていけば「大丈夫」の安心材料をたくさん増やしていくことは大切です。八王子市中央図書館では9月18日にレビー小体型認知症当事者の三橋昭氏による講演(要申し込み)や、10月16日まで南大沢図書館で認知症に関する展示が行われています。
ちょうど一年前に取材をさせて頂いた時に、認知症について正しい知識を持つことの大切さを教えて頂きました。そして今回は、実際に認知症を持っている方とお会いし、お話をしたことで、社会的弱者というカテゴライズについて疑問を持ちました。社会的弱者とカテゴライズされてしまうと、生きていくことに対して多くの困難が付きまといます。この困難を乗り越えるには、周りの方の手を借りなければ乗り越えられないものが沢山あります。それなのに、社会的弱者とカテゴライズされた方は圧倒的に世間から手を離されやすいし、自分から手を離しやすい。それは、「弱者」という立場に対して深い理解が無いから、偏見が生まれてしまうのではないかと思います。だからこそ、地域推進員さんや市役所の方たちと共に認知症を持っているBLGのメンバーさんたちが明るく笑いあっているのを見たときに「社会的弱者と言われていても、何も出来ないわけでは無い」と強く感じました。また、認知症について深く知る機会をいただいたことと、自分の精神病
と歩んできた経験から「弱者」と一括りにして、知ったような気になることは恐ろしいことだと思いました。誰がどのくらいの手助けが必要かといったことは一人一人と会ってみないと分からないからです。
図書館のような正しい情報を学べる場において認知症などの誤解されやすい病気に対し、正しい情報と理解を常に更新して受け入れていくこと、そして、推進員さんや市役所の職員さんを始めとする生活を支えてくれている方の行動や、当事者の方の些細な意見が八王子に住む私たちが私たちらしく生きていける街づくりの基盤になっていきます。
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