ASAメールvol194 2021年11月16日 「エジプト展の舞台裏へご招待」

 

「エジプト展の舞台裏へご招待」

 


 

今回は日本全国を回り、ついに東京富士美術館にやって来た国立ベルリン博物館所蔵古代エジプト展の搬入の様子をお届けしたいと思います。東京富士美術館での展示で古代エジプトへタイムスリップしてみてください。

 まずC.Hから展示品が搬入される前に展示ケースが搬入されてきます。今回の古代エジプト展は日本各地の美術館を回ってきたため、ほとんどの展示ケースが前回の展示から引き継がれたものですが、それぞれの美術館の特色を出すために少しずつ展示方法も変更されているそうです。それらのケースはまだ何も置かれていないまっさらな展示室へと運ばれ、それを見るだけでもこれからどんな風に展示室が出来上がっていくのかわくわくします。東京富士美術館の展示室は数か所の壁が可動式になっており、それぞれの展示に合わせて毎回配置を変えるそうで、今回の古代エジプト展は日本各地の美術館を回ってくるためそれぞれの地域性やその美術館所蔵の作品とのコラボレーションなど、ここでしか見られない特別感がそれぞれの展示にあります。

 




 続いて私A.Yからまっさらな展示室が少しずつ賑やかになった午後の搬入作業の様子を、特に興味深かった美術館の方からのお話と共に紹介します  午前中の間にほぼ全ての展示ケースが運び込まれ、美術品の配置位置がテープで記されていました。展示ごとにストーリーがあり、展示するものによって、館内に壁を追加で作成するなど、大掛かりな装飾の入れ替えが行われます。これから搬入される美術品をすぐにケースに飾るかと思いきや、箱からすぐ出さずになんと2日間も会場の空気に慣らしてから展示されます。では何故すぐに展示しないのでしょうか?

 その理由は、すぐに箱を開けて展示してしまうと急激な温度差により作品にヒビが入ってしまう可能性があるためです。館内の温度管理が徹底されているのはもちろんの事、各展示物のケース内部にも温度計が設置されており、作品一つ一つを大事に管理している事が感じられました。

また直接搬入とは関係ありませんが、作品を収納する地下の収蔵庫には、万が一、火災が起きた場合に窒素ガスがすぐさま噴射され、作品を火災から守るシステムが完備されていることが、お話を伺った中で特に印象に残りました。

さて搬入作業の話に戻りますが、館内には私たち以外に多くの美術品搬入業者の方々がいらっしゃいました。素晴らしい展示の背景には、長い下準備と多くの方々が関わっていることを今回の取材でより実感しました。

 











 続いて私S.Yはトラックから展示物が運び込まれる際にどのような工夫がされているのかいくつか紹介します。普段は情報漏洩防止の観点から搬入は内密に行われます。高価な展示品には警備車両がつけられることもあるそうで、こうして実際にトラックから搬入される様子を取材できる機会はなかなかないそうです。

今回の展示物は重いものも多く、搬入に用いられたのはなんと10トントラック4台です。トラックの中でも湿度と温度が一定に管理されて運ばれているそうです。展示物はリストチェックを二重に受けて館内に運び込まれます。展示物は木箱に入れられて搬入されていました。その際に運ぶ時の衝撃が展示物にダメージを与えないために、展示物を箱に入れる向きによって進行方向が決まっています。とても重要なことなので、木箱の表面には展示物がどの方向で入れられているのか、そして運ぶ方向について間違いが無いように大きく書かれていました。展示物を運ぶときに用いられていたのは小さなタイヤがいくつかついている台車や「ハンド」と呼ばれる道具です。見た目は少しだけ大きめの普通の台車のように見えるハンドですが、この道具を使うと、なんと一人で2500kgまで運ぶことが可能になります。重い展示物が多い今回の搬入には欠かせない道具ですね。どうして重いものを運ぶことができるのか考えてみたのですが、ばねの力が大きく作用しているのではないかと思います。皆さんはどう考えますか。

高価で繊細な展示物の搬入では、気を付けるべきことや運ぶ際の工夫などが多くある事が分かりました。

 9月19日から開催されている古代エジプト展ですが、大好評で早くも来年1月16日まで会期が延長される事が決まりました! 既に行かれた方もそうでない方も、これから何度でも足を運び新しい発見をされてはいかがでしょうか。そして、この記事を思い出しながら、展示物が経てきた長い旅にも思いを馳せてみてください。




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